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グレーのもんぺのおしりの思い出 [思い出の話]

ある日のこと。
もう何年も前、季節は初夏だろうか、そんな思い出の話。

きれいに手入れされた庭を見ていた。
つつじが咲いていたと思う。
そのまま視線を伸ばすと、山肌にグレーのもんぺのおしりがあった。
働き者の婆様の屈みこんだ後ろ姿が、「崖」という表現が相応しいんじゃないかというような、そんな急斜面にあった。

なんて達者な婆様だ。 どこから上がったんだ? 降りてきたのか? あの高さから?
山菜でも取れるのかな?

そう思って見ていた。
一緒にいた母にあまりじろじろ見るもんじゃないと窘められても、もんぺのおしりが懐かしくてついつい見入ってしまった。
曾祖母はいつももんぺをはいていた。
そんな話をして、母ももう一瞥した後に再び窘められた。

すると視線に気がついたのだろう。
件の婆様が振り返ってこちらを見た。
さすがに都合が悪くなって苦笑いしながら会釈をして、視線を外した。
が、何かがおかしい・・・。

どうにも気になってもう一度婆様を見た。
婆様の顔が、その本人のおしりの真横で、上下逆さまになることもなく無表情でこちらを見ている。
いくら体が柔らかくても、人の体の構造として、有りえない。
思いっきり、気持ちが悪い。
この世のものじゃないものを見た、そんな気分。

いい加減にしなさいと母に叱られたが、ずいぶんと呆けた顔をしていたのだろう。
どうしたと聞かれたので見ている光景を伝えた。

二人で目が点になって見つめる視線の先が、ひょいと動いた。
そろってぎょっとしていると、そのもんぺのおしりはあっという間に岩肌を駆け上っていった。

その時になってようやく気がついた。
そのグレーのもんぺのおしりの主は、カモシカだったのである。

時間にしたらほんの十数分なのだろうけれど、人じゃなかったと気がつくまで永かったこと!
まさかと思ったけれど、目撃した場所が「八郎潟町真坂地区」。
シャレじゃないんだからと母と二人で大笑い。
いや、今年も何回かクマの目撃情報が町の防災無線で流れていたから、何も不思議じゃない。
なにせその山肌は出羽山地、そして奥羽山脈につながっている。

カモシカにも表情はあるんだよ。
「熊とちかんに注意」というJAFにも載ったことのある立て看板のそばで、引きつった顔のカモシカがぬかるんだ田んぼを走って通り過ぎて行ったことがあるもの。
突進してくるカモシカに驚いて、何台の車が急ブレーキを踏んだことか・・・。

そんな、カモシカの思い出。
これ、思い出したら書かずにいられなくなってしまったの(>_<)
お付き合いくださった方、本当にありがとうございます。

写真がないのは寂しいので、手持ちのグレーの後ろ姿でおしまい。

グレーのおしり.JPG

これ、うさぎです。

 

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